「夫婦でマイホームを取得した時、税金はどうなる」
●マイホームの名義人は?
ご夫婦でマイホームを取得された場合、夫婦別姓制度も声高に叫ばれている現状ですから、昔のように全部ご主人の名義にするという例は、稀ではないかと思います。姉さん女房が流行り、夫婦共働きが常識化した昨今、「私がお金を出した分は、私のものよ」といった主張は、当然に出てくるものと思います。
では、共働きの若夫婦を例にして、どのようにすれば税金上得か考えてみましょう。
●購入時は共有で
マイホームの取得資金は通常、自己資金、親からの援助及びローンで賄われますが、まず自己資金については、各人に今まで貯めてきた預貯金などがありますので、その名義に従っての拠出になります。次に、前回ご説明しましたように、(祖)父母より住宅資金の贈与を受け、比較的安い贈与税で済ませることができますので、ご夫婦とも、それぞれの(祖)父母からの贈与資金を拠出することができます。最後にローンですが、それぞれの勤め先の会社とか、加入している年金とかから借入れる場合には、名義人がはっきりとしていますので、その金額が拠出額になります。このほか、住宅公庫や銀行から借入れる場合、通常いずれか一人が主債務者となり他の一人が保証人となるケースと、いずれもが連帯債務者となるケースがありますが、それぞれの負担部分については、明らかでないことが殆どだと思います。このとき、各人のローンの負担金額、つまりマイホームへの資金拠出額をどうするかという問題が残ります。ローンの返済を共同で行うときの、各人の負担割合を決めれば良いのですが、将来のことでもあり、夫婦間では生活費など、負担割合などはっきりしない部分も、同一世帯内ということで生じてくるでしょうから、例えば折半とか、ローンの申込み時に提出した、各人の給与証明の金額比で按分するといった方法がとれます。
(なお、住宅取得特別控除は(連帯)保証人では、適用がありません。お二人とも(連帯)債務者にされる必要があります。)
これらすべてを合算して、例えば、100分の45と55とか、7分の3と4とかの、キリの良い比率にするようです。
各人の拠出割合と持分割合とが大きく違えば、その差額は贈与ということになり、贈与税が課されることとなります。後日、所轄の税務署より、「不動産の取得についてのお尋ね」が送られてきますので、しっかりとした按分計算についての根拠が必要です。
●売却時も二人分の3,000万円の控除
マイホームを売ったときには、売却額から取得費と譲渡費用とを差引いた金額が譲渡差益となり、これが居住用財産の特別控除額3,000万円以上であれば、所得税と住民税がかかります。バブル期は過ぎ、今後大幅な不動産価格の上昇はありませんが、売却は何年も先のことですので、物価上昇などにより思わぬ差益が出ることがあります。しかも、建物部分の取得費は、減価償却により目減りします。このとき、ご夫婦の共有名義にしておけば、各人の差益について、3,000万円控除を受けられますので、売却時に課税される確率はぐっと下がります。
●離婚の時の財産分与
今、離婚が問題となっている世代はもう少し年齢の高い、どちらかと言うと、共働きでも、ご主人の単独名義のマイホームとなっている例が多い世代のようです。このとき、慰謝料だ、財産分与だということになるのですが、ご主人から奥様に「慰謝料として、家をやる」と言いますと、奥様には税金がかかりませんが、ご主人としては、この家を一旦売って、そのお金を慰謝料として支払ったような課税関係になり、しかもこのとき、居住用財産の3,000万円控除はありませんから、ご主人にとっては、家は持って行かれる、税金だけが残るという散々な状況になります。弁護士さんによりますと、このあたりが、離婚時の財産分与とか慰謝料の支払いの実際上の障害になっているとのことです。
こんなときに、最初から共有持分にしておけば、悩みは半分になりますし、何だったら全部他人に譲って、3,000万円控除を各人が受け、ご主人からか奥様からかは存じませんが、手元に残った現金から、慰謝料を支払うことも出来ます。実に、スッキリとしたことになります。
●相続のとき
これからマイホームを取得されるお若いお二人に、離婚だの、相続だの縁起でもないお話で恐縮ですが、ついでのことながら、夫婦は一心同体だそうですが、死ぬときは別々ですし、相続税の関係上も別々です。相続税も累進税率構造なので、一人よりも二人の方が税額がぐっと減ることになります。
●夫婦でも財布は別?
早足で人生を駆け過ぎてしまいましたが、各人が稼いだ分は、各人の財産とするのが今後の一般的な考え方となっていくようです。マイホームの持分割合について、ご夫婦で、ごゆっくりとご相談されては如何でしょうか? ご伴侶の隠れていた一面を垣間見ることが出来るかも知れません。
(これは平成8年6月7日毎日新聞朝刊のハウジングスクエアAに掲載されたものに平成16年度の税法に合わせ、若干の字句修正を加えたものです。)